「猟師列伝」始まりました

トップバッターは熊本県で現在までに約2000頭の猪を捕獲、トップクラスの解体技術を誇る処理施設を運営する大寺順一さんです。

熊本県「猪鹿工房東陽」
大寺順一さん
昭和23年生まれ、72歳。
熊本県宇城市出身。銃歴(散弾銃)約42年。現在までに約2000頭の猪を捕獲し、
熊本県でトップクラスの解体技術を誇る処理施設を運営。Youtubeでいち早く臨場感漂う猟の動画を紹介しました。

(優秀なシシ犬を育てるのには、最低2年はかかる。呼び名はすべて「アカ」で統一している)

BG:熊本県八代市はどんなところですか?
大寺:阿蘇や九州山脈の方とは違って雪はあまり降らないし、住むには最高!ここ数年寒さがなくなってきている気がするな。それによる、猟への影響は感じないけれど・・
BG:4年前に熊本地震がありましたが、影響はありませんでしたか?
大寺:震度7位で、事務所の一部が壊れたりはしたけれど、猟は休まず行ったし、猪がいなくなることはなかった。多少山道に影響はあったけどね。
BG:どんな方法で猟を行っているのですか?
大寺:銃猟・箱罠・くくり罠。鹿と猪は1:9の割合で、断然猪を獲っている。
箱罠とくくり罠はこの5~6年で始めた。有害駆除が出てからだね。
銃猟は、大人数で追いかける巻き狩りではなく、自分は犬との単独猟。犬にほえ止めさせて、5~10mで、ズドン!
BG:結構近いですね。お一人で猟をするのは危険ではないのですか?
大寺:命がけだよ。今まで3回ぐらい猪に噛まれているし、猟で命を落とす人もいるよ。猟の時は猟犬を3、4頭連れていくよ。犬が噛みついているときは、弾が犬に当たるリスクがあるから銃は使わずに、ナイフで向かう事もある。
BG:猟犬は特別な犬種ですか?
大寺:ははは、ただの雑種。中型犬くらいかな?犬がいい仕事をしてくれないと銃猟はできないね。箱罠やくくり罠とは、高揚感・達成感がまるで違う。猟の楽しさを感じられるよ。最近、罠の見回りが多くて、猟に行けないから寂しいね。
BG:大寺さんが獲った猪肉は「美味しい」とシェフの方々に好評ですが、何か理由があるのでしょうか?
大寺:嬉しいね。止め刺しは私一人しかしないよ。他に任せられない。商品に出す肉は、箱罠・くくり罠で獲ったものを使うよ。銃猟で獲るものは犬が噛みつくから肉に傷みが出るからね。

BG:運搬にもこだわりがあるのですか?
大寺:あるある。最近、軽トラの冷凍車買った!箱罠・くくり罠の場合、処理場から離れた場所だと2~3時間くらいかかるから、鮮度を保つため、止め刺し後すぐに、内臓を取り出し、2リットルの凍らせたペットボトルを内臓に詰めて、冷凍車で運んでくる。
BG:なぜそこまでするのでしょうか?
大寺:基本の基本!ほかの処理施設の解体は知らないけど、肝心なのは、内臓温度をどれだけ下げられるか。これに失敗すると、内臓温度が上がって、腸壁からアンモニア臭が肉に移る。ジビエが「臭い」といわれるは、これが一番の原因だと思う。解体技術は、あまり味には関係ないかな・・
BG:美味しいジビエを作るコツは、内臓を早く出して、冷やすことですね。
大寺:そのあと皮つきで、1~2日冷蔵庫保管。それから解体ね。個人的には一番いい肉を作るやり方だと思っているけど、ほかにいい方法あったら教えて(笑)
BG:皮を残した湯剥きの猪もたまに出されますよね。
大寺:南九州、鹿児島・熊本・宮崎あたりは昔から皮を付けるのが一般的だよね。獲れた後、猪の体が冷えると湯剥きは出来ないから、近場で小型の良質な猪が入った時だけ。
湯剥きにこだわっているシェフもいる。味は絶品だよ!
BG:お肌がすべすべですね。猪肉は毎日食べますか?
大寺:食べないよ(笑)。毎日じゃ、飽きるしね。熊本城や阿蘇山とか身近な観光名所に何十年も行っていないのと同じ感覚かな。
BG:食べる時はどんな調理法がおすすめですか?
大寺:焼肉が一番手軽かな。鍋は手間がかかるしね。
BG:他に伝えたいことはありますか?
大寺:八代市には3つの猟友会があり、銃専門隊1個と罠専門隊2個に分かれているんだけど、銃猟の場合は、巻き狩りだから、1頭獲れても駆除費を隊員数で割ると報酬が少ない。一方罠猟は、すべて個人だから報酬が多い。これを銃猟の駆除隊が妬んで、罠猟の止差しに銃を使わせない。100キロの猪を止めている時に、もし罠のワイヤー切れたらどうなる?銃で止差ししなければ危険でしょう。結局、市町村単位だと、こんな内輪もめの話がでてくるんだな。県がもっと主導で指導すれば、こんな変な話も出ない。もっと熊本県頑張ってくれ!

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